90歳宅へおじゃま

洗い物が辛い男性 おでかけ

弦楽四重奏祭り出演に紹介してくれる人があって。
その初顔合わせに行ってきた。

90歳の、仲間内では有名なおじいちゃまと実際に会うことになって、かなり緊張した。
しかもご自宅の完全防音室で練習ができるので、招いてくださった。
しかもご自身の運転でお迎えつき。

おしゃべりしながらでも安全運転はしっかり。
90歳なのに、メガネ類一切使わず白内障も全くないんだと。驚異だよね。

年齢にふさわしい、温厚な方だけどけっこうよくしゃべる。
みんなから慕われるはずだわ。

あたしはね、以前この曲をどこかでやったことがあった。
はっきり覚えてないけど、どこかの発表会に出たかもしれない。

それでも、この日のために個人練習はかなりやって来たよ。
なのに、ほかのメンバーは練習しないで来たなんて人もいる。


年齢よくわからないけど石田ゆり子似(もう少し若いかな)の女性、今までこの曲をやったことはないと言ってる。
「今日は腕慣らしのつもりで」

そういう人って、練習の必要がないほど最初から弾けちゃうんだね。
音程が高くて細かいチロチロした動きのところをちょっとだけ練習したらもう、すぐ発表会に出られるよ。

あたし「ヘタです」って前置きすればよかったな。
紹介者は発表会の幹事さんだけど、あたしの腕前のことみんなにどう紹介したんだろう。
たぶん、おじいちゃまから「誰かいないか」と言われて「こんな腕前でもよかったら」って言ってくれたんじゃないかな。

まずまず、1楽章ごとにああだこうだ言いながらも最後まで通ったところで。
おじいちゃまが「なかなか弓の使い方がいいじゃない。スタッカートがよくできてる」と、あたしに言う。

「え。ほめて下さってるんですか。やっとほめられた~」と涙をぬぐうしぐさだけした。

こういう自信のない人には、ひと言でもなにか見つけてほめるといいよね。
こないだ、やっぱりうまい人と組んだときにあたしだけ何もほめられず傷ついてたのがまだ尾を引いてたんだ。

「あとは音程をもうちょっとね」と言われて、はい全くその通りです。

「お茶にしますか」とおじいちゃまが言い、一瞬間をおいて石田ゆり子さんが「はい」と返事する。
石田さんはご実家がこのすぐ裏で、中学三年の時からここへバイオリンを習いに来てたんだって。
おじいちゃまの奥様が、バイオリンの先生だったそうだ。

もう亡くなった奥様の思い出話など聞きながら、おじいちゃまがお紅茶をちゃんと茶葉から淹れてくださる。


案内されたダイニングは、失礼ながらけっこう取っ散らかってる。
娘さんもここでバイオリンを教えてるとのことで、一緒に住まわれてるのかと思ったら一人暮らしなんだって。

ダイニングテーブルの上にはなぜか裁縫道具まで置いてある。
寡黙な男性(LINEグループを設定してくれた遠藤憲一似)がおじいちゃまに「針に糸通せるんですか」と初めて口を開いた。

すごいよね。生前の奥様からよく、針に糸を通してと頼まれてたんだって。
運転免許だって、メガネなしで更新できちゃう。
「秘訣はなんですか。音楽かな。あ、それなら仲間全員同じはずか・・・」

最初から脳足りん全開のバレバレにしてきたよ。

お茶を片づけて練習再開、中略、終了。
石田さん「個人練習しておきまーす」
あたし「たぶんもうこれ以上うまくならないと思いますすみません」
遠藤さん無言。

あたしはこのあと、オケの夜練へ移動する。
どこで、と聞かれて答えたらおじいちゃまが昔近くに住んでたことがあるって。
「練兵場があるでしょ」

あーあります。ってあたしは普通に答えたけど、あとのお二人が反応した。
遠藤さん「練兵場(笑)自衛隊ですよね」
石田さん「れんぺいって、どういう字を書くんですか」
遠藤さん「訓練のレンに兵隊のヘイ」

あたしの行ってた高校の近くに会社があったとかで、なつかしさでいっぱいになる話をたくさんしてもらった。

さて、帰り道。お疲れのおじいちゃまに車で送らせるなんてことできるはずがない。
来るとき、一応道を覚えるように注意してきたけどなにしろ方向音痴で自信がない。

石田さんはすぐ裏のご実家に帰っちゃうし。
遠藤さんもてっきり車で来たのだと思ってたら、よかったー駅まで一緒に歩いてくれた。

寡黙な遠藤さんに合わせて、あたしも喋りすぎないようにしたよ。
グーグルマップを使っても銀行にたどり着けなかった話などして呆れられた程度だな。

道中、学校があった。日曜だから生徒がいなくて、小学校だか大学だかよくわからない。
遠藤さんが唯一自分から口を開いたのが「ここ、高校」

しばらく進んだら、やっと校名の看板が見えた。へえ、商業高校。

今考えてみるに、きっと次回ここに来るときの目印にできるように教えてくれたのかもしれない。

電車、幸いに遠藤さんとは逆方向だった。
二人で黙って乗っててもいいんだけどね、あたしはできたら本が読みたいので。

そういえば、車中も道中も半袖なのはあたし一人だけだったな。
練習がはじまってすぐ、あたしが冷や汗であふあふしてるのをみて冷房をかけてくださったんだ。
よくみんな長袖着てられるな、とは思うけど。
あたし以外の人は暑くないんだもん、あたしに合わせて冷房したらみんな寒いに決まってる。

完全防音で窓は二重だし。「換気扇つけると防音じゃなくなっちゃうんですよ」っておじいちゃまがおっしゃる。
汗を拭いたわけでもないのに、暑がってるってわかっちゃうんだな。


いいです、って遠慮してるのに冷房を入れてくれたので「寒かったらすぐ言ってくださいね」とみんなに念を押した。

10分ぐらいで遠藤さんが音を上げた。吹き出し口の真っ直ぐ前に座ってるから。

今度来るときには、何を着て行けばいいんだろう。
着るものじゃないかもね。きっと、ハダカで弾いても冷や汗で暑くなりそうだ。

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コメント

  1. うなゆき より:

    オン年90歳
    やっぱり他人と楽しむ趣味が大切なのかなぁ
    そして相手の良い所をまず褒める
    これってナカナカ出来ませんネ
    緊張感と体感温度など
    今日のブログは実に奥深いズラね

    • よはねす よはねす より:

      そうですかあ。自分では、面白いこと書けなかったナと思っていたのです。
      またおほめの言葉をいただいちゃった。ほめられるって本当にうれしいものですね。ありがとう。
      ブログも多少はこうして他人と楽しむことができますね。お互い長生きしちゃいましょうかね。

  2. にゃんた より:

    お育ちの良さを体現しているおじいちゃまですね。
    針仕事できる方は尊敬しかありません。

    • よはねす よはねす より:

      ああ、そうかー。考えたらそんな大昔に楽器を習うだけでお育ちの良さが伺えますもんね。片鱗は聞かせてもらったけど、今度はもっと突っ込んで聞いちゃおうかな、お育ち。でもにゃんたさんもお育ちの良さは言葉づかいににじみ出てますし。お針しごとなんて姉やか婆やがいるからさせてもらえなかったのでしょ、うんうんわかるわかる。