記念DVDとか写真とか

市民オケのコンマスが、このオケが生きがいみたいな人でね。

創立時には彼はまだ子供だから参加してなかったけど、入団したのは創立後わりとすぐみたい。

彼は、自分が入った時からのすべての演奏会の、プログラムとDVDを保管している。
このほど、その貴重な資料をすべてデジタル変換して、希望者に頒けてくれるという。

外付けHDかUSBにコピーして、視聴手引書まで付けてくれるって。
それぞれ、1テラバイトもあるそうだ。

申込書を休憩時間に配ったら、その日のうちにもう申し込みが何通も彼に手渡された。

ちょっとびっくりした。
そういうのが欲しい人は、演奏会のたびごとに作られるＤＶＤを毎回買ってるもの。
まあね、ちょっとかさばるよね。1年に2枚、それが20年30年と溜まってくると。

遺品を整理する人って、どっちのほうがラクなんだろう。
あたしはDVDが数十枚溜めてるけど、東京23区ならたぶんどこでも燃やすゴミでいけると思う。
HDだと面倒くさくならないかな。心配。

だいたい、昔の写真とか卒業アルバムとか興味ない。むしろ嫌いかも。
卒アルってブカツの写真ばっかりね。
あたしはブカツの代わりに図書委員活動を毎日してたのが数少ないいい思い出。
でも委員会の写真なんて撮ってないし、あったとしても卒アルに載せる欄なんてないだろう。

先日のオケ練習後、ちょっと人待ちをしてるところにコンマスが通りがかった。
「よはねすちゃん」といいかけて、自分で恥ずかしくなったのかも。

いやー、いつまでも「ちゃん」なんて呼んでるけど、もう60歳になったって聞いてびっくりしちゃたよ。

そういうアナタも「N田クン」なんて呼ばれないようにね。

コンマスはあたしの5歳上。人を笑わせるのが好きな、やんちゃな性格なんだ。
ほんとはエライ、尊敬される立場のはずなんだけど、未だにクン付けで呼ぶ仲間がちらほらいるんだよ。

彼がわざわざあたしの前で足を止めて言うには、
「その記録の中に『アレ』入ってるよ。よはちゃんの、テレビ出演」

そんな気がしたんだー。あたしはそのビデオ持ってないのに、なぜか複数の人が映像を持っててさ。
たまに、仲間の家で飲み会するとそのビデオを流されることがある。やめてー。

入団間もない、20代最後ぐらいのころ。
地元Uチャンネルテレビがうちのオケを取材に来て、なぜかあたしが頼まれて時間を取って個別インタビューを撮られた。

もっと映える美人、知的に喋れる人がいくらでもいる（いた）のに。
美人から順に依頼して断られて、そのあと頼まれたあたしが断れなかっただけかも。

あたしは、自分が喋ってるところなんて恥ずかしくて一人でだって見たくない。
それをだね、仲間うちとはいえ、みんなの前で見せられるのっていったい何ハラスメント。

せっかく膨大な作業をし、声まで掛けてくれたN田クンには悪いけど、いらなぁい。

老後の楽しみとして捨てずに取ってあるDVDを見るのは、音楽活動もできなくなって引退したあとのような気がする。
若かったあたしを見て、楽しいかなあ。老いぼれた自分を恨めしく思うのかなあ。

最近、鏡を見ることも少なくなって。まつ毛が抜けて目に入ったときぐらいしか見ないよ。
家の中では邪魔くさいから眼鏡も外してる。

たまーに、眼鏡をかけたまま鏡の前を通って自分の顔が目に入ると、ぎょっとする。
いったい誰だよ、このばーさんは。

仕事をやめて一年半ものんべんだらり暮らしてると、こうなっちゃうのか。

ほんと、急激に来た。顔に。
体は自分でわかるけど、顔は人にはっきりわかるからやだね。仕方ないけど。