アンコール曲が決まった

きのうも行きたいコンクールが二つあったけど、夜にオケの練習が入ってたからはなから諦めてた。

きのうの指導者は、あたしは初めて見るトレーナーさん。

普段の練習は、ちょっと演奏するとすぐに止められてたくさんの注意を受けるんだけど、きのうの先生はまず何も言わず最後まで通された。

もう、本番まであと1か月しかないからね。今さらたくさん注意されることがあったら困る。

アンコール曲が決まって、初めてきのう練習したよ。
マスカーニ歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。

これ、パイプオルガンを使う曲なの。
以前使っていたホールはオルガンがあったし、地元にオルガニストがいたから、アンコールによく使ったことはある。
そのホールが今度から使えなくなって、今回使うホールにはオルガンなし。

今回の指揮者は、歌劇が得意な人なんだ。
演奏会プログラムにも歌劇からの抜粋が2曲入ってる。だから、きっと指揮者の希望でこのアンコール曲も決まったんだろう。

そういうわけで、我々はオルガンのないカヴァレリアなんてやったことがない。
きのうのトレーナーさんのアドバイスは、オルガンの代わりに金管楽器を目立たせたらよかろうと。

不思議だー。トランペット、トロンボーンが弱音で奏でると、ほんとにオルガンのように聞こえた。

この曲は教会のシーンなので、オルガンがないとちっともサマにならない。
トロンボーンは神を表す楽器、と聞いたことがある。同意。おごそかだ。

ずいぶん前の話だけど。うちの会社に若いのが中途採用で入って来た。
箱根駅伝で走ったことがある、というのが最初のウリだったけど、そんな肩書きいらないぐらい、みんなから可愛がられるヤツだった。

企画部に配属され、音楽イベントの現場についたとき。
まだ新人の彼は、上司から「お前はとにかく走ってろ」と言われ、広い音楽ホールをただただ走り続けた。

お客様には「えらくフットワークのいい若者が懸命に走り回ってた」と大好評だったそうだ。

そんな彼は、音楽のことなんかほとんど何もわからない。
しかし、その時初めて聞いたこのカヴァレリア間奏曲に、とても感動したんだって。

職場で思い出しては「涙が出ます」としんみりしてた。

その次、別のイベントでは上司が「オマエが気に入った曲だから、これも入れることにした」と。
あたしもうれしかった。

後日、若者をイジってみたら
「すみません。知的な部分をお見せしてしまって」と目を伏せるので吹き出してしまった。

さてさて。
本番まで1カ月かー。

うっ。忘れてた。お隣パートのおいそが氏、弓の毛を人の何倍も消費するのに毛替えに行ってる時間がない。
彼の行きつけの楽器店をあたしも使ってるから、遠慮するのを「ついでに」と強引に預かったことがあったんだ。

あれからずいぶん経つ。
春ごろ見せてもらったときはまだ大丈夫に見えたけど、そろそろ危ないだろう。

練習が終わって、完全に片付けたときふいに思い出した。
彼の姿を探したけど見当たらない。
ああ、彼、毎週打楽器運搬の手伝いをしてるんだった。

たった二人でティンパニを1階に下ろしてるのを見つけ、後をつけた。
トラックに積み込み、また次の楽器へ向かおうとしてるとき声をかけた。

やっぱり、「毛が半分くらいになっちゃってます」と笑ってる。
ただし、来週の練習は来られないんだって。
じゃあ、そのあとにする？
実は旅行に行くので、その間ならどうせ練習できないのでちょうど良いとのこと。

よかったー。
預かってるあいだに楽器運搬も片づいたようで、おいそが氏と一緒に駅まで向かった。

そういえば、彼オペラキチ○イなんだ。
今回のプログラムについて、前から聞きたいことがあったのに。
すっかり忘れて、旅行の話ばかり聞いてしまった。

それはまた、旅行から帰ってきたときの話のタネにとっておこう。