ちょうどいいヘタを目指す

オケの仲良しさんと、他愛ないメールをしてたの。
昔いたメンバーの近況とかね。

突然、何の脈絡もなく
「それを言うならあの新人さんが全然弾けてないのが気になる」

そこであたしは既読スルーしちゃったよ。

あたしは、その新人さんの弾き方をほとんど見たことがないの。
ま、友達からそう見えるんなら弾けてないんだろうとは思う。
友達だってね、自分のことヘタって思ってるみたいなんだ。
その彼女が言うんだから、よほどなのかな。

・・・って思ったけど、まさかそれを返信するのは失礼でしょ。いくら仲良しだって言えないよね。

思い起こせばあたしが入団してから10年ぐらいは。
あたしも含めみんな、うまい人の隣に座りたがらなかった。
「この人、ヘタだな」って思われるのがいやだからね。

で、うまくないと自覚する人が後方に固まって椅子を確保するのよ。
トップ奏者は一人で先頭に座って、練習開始を待つでしょ。
その時、中間部の椅子がぽっかり空いたまま。
トップさんが手招きして「詰めて～」って毎回同じことを繰り返してたよ。

で、入団から10年も20年も経つと、下手くそだったあたしもさすがに少しは上達してきて。
30年経った今なんと、隣に誰も座りたがらなくなっちゃった。悲しー。
トップ奏者の孤独が理解できたよ。

うまくなりたい。
その、加減が難しい。

室内楽はうまい人が多くてね。
人数がオケよりも少ないぶんもっと、技量に差があると面白くないの。
だからあたしは室内楽の方をより必死で練習する。

オケだってうまく弾けた方が自分では気持ちいいけど、ひとりぐらい音を外しても大丈夫だろう、って甘えがある。
うまい人はね。「本番になればみんな弾けるようになるわよー」って励ましてくれるけど。
あたしは初見も本番も、大して変わらないと思う。練習足りないかなーやっぱ。

・練習不足で弾けてない
オケにとっては、このタイプがいいのかも。
練習してうまくなれば、仲間もオケもお客もみんなハッピーだ。
仲間も遠慮しないでお隣に座りやすい。

・弾けてないのが目立つ
これ、あたし。目立つところで音程がヒドイ。ボウイングも間違うと目立つ！隣に来た人は迷惑だろうな。

・練習してもなかなか弾けるようにならない
練習の虫さんがいるの。
「練習できてなくて弾けない～」っていうから話を聞いてみると
「とうとう防音カプセルを居間に設置して、夜中3時に目が覚めては練習してる」と無茶苦茶。

弾けてるんだけどね、上手！！ってほどにならないのが残念というか、、
あたしからすると逆にホッとするんだけど。隣にいてくれると居心地がいいタイプ。

・完璧に弾けちゃう
能ある鷹は爪を隠すのか、弾けてるのに大きい音を出さない。でも隠しきれないから誰も隣に座ってくれないタイプ。
でも、あたしは彼と同じ姿勢と弓の角度で弾いたら上手く弾けるのか、って観察したいから隣に座りたい。
いや、隣より真後ろがいいな。

・すごく上手だけど、よく目立つ間違いをする
誰よりも大きな音で、しかも美しい音で弾く。
なのに、指揮者の示すこと見てないようで、しょっちゅうやらかす。
みんなそのたび、「あー」というか「もー」というか残念に思う。
違う意味で、隣に座りたくないタイプ。

音楽って、無伴奏じゃない限り、チームプレイだからねえ。
誰ともおしゃべりしない人でもいいんだよ。
言葉で表現できなくても、音楽でやりたいことを表現できて、それが仲間に通じるようになったら最高に楽しめる。

さてあたしは。元々は人見知り激しくて引っ込み思案だと自分で思っていたけど。
どう見てもオバちゃん、になったあたりから、性格もオバ化するんだねえ。
知らない人、初対面の人でもほとんど抵抗なく話せるようになってきた。

せめて、お隣にみんな気軽に座りに来てほしい。
ねえ、ヘタなんだからさ。みんな、誤解しないで隣に来てよお。