フィレンツェはロシアの香りしかしなかった

音楽

室内楽の情報を探してたら、あっちからどんどん飛び込んで来るようになった。

アレもやりたい、コレもやりたい。
やれるうちにやっとかなきゃ、やらないうちにもうすぐ死んじゃうよ。寿命でね。

しかし、いくらなんでもキャパオーバーだよなあ。
せっかく夢見ていた曲ができるというのに、練習が追いつかない。

きのうは、2曲。
1曲は紙の楽譜で、もう1曲はタブレット。
確認して、バッグに詰め込んで出掛けた。

会場は3部屋ある。今回は2曲とも同じ部屋だ。1回しか考えないで済むのはありがたい。
手帳で部屋だけ確認して、とにかくセッティングする。
メンバーが「よろしくお願いします」と集まってくる。
誰かが「4番はやったことがない」なんて言ってるから、ああそうか、じゃあこれからベートーベンの4番をやるのね。
じゃ、紙楽譜だ。
かっこいい曲だよ。CMが入っちゃうけど、このアルバンベルク四重奏団を聴いてほしい。
あたしはいつもこれを流しながら一緒に練習してた。

バイオリンのOさんが「あなたが弾いてくれるといつも安心でうれしいわ、うまいし」なんて言ってくれる。
お世辞とわかってるけど、それでもとてもうれしい。
この人、毒舌というかよく勝手なことを言う人だけど、音楽については必ずほめるのよね。

気分よく弾いていたら、第3楽章から第4楽章と進むうち、戸惑う。
こんな曲だったっけ・・・・何とか最後まで弾いたけど、記憶にない。もしかしたら今回最後まで練習しなかったのかな。
練習メモをみたら、三回練習したことにはなってるけど。

さて、次の曲も同じ部屋だから、移動しなくて済む。そのままの位置でタブレットを譜面台に置いたら。

え、動けって?あっ、そうか、これから六重奏をやるのね、この狭い部屋で。

タブレットには、もう何十という楽譜が詰まっているんでね。
何の曲をやるかなんて毛頭、考えもしなかった。
そうだ、いよいよあの念願のチャイコフスキーの六重奏「フィレンツェの思い出」ができるんじゃん!

先月第1と第2楽章をやったので、今回は残りの第3と第4楽章。
メンバーは先月とは違う。
えーっと、ファーストビオラは知らない人だな、どんな人かな・・・と思ってたら。
ええっ。日曜室内楽の幹事さんが座った。
あっそうか、そういえばビオラが急病で、急募があったんだ。へー。この人が来てくれたのね。

日曜室内楽でも、ビオラさんが一人手を骨折したり神経がどうとかで発表会に出られなくなったとき、すぐこの幹事さんが入ってくれるの。
すぐ弾けちゃう、すごい人なんだよ。こないだの発表会では、あの小難しい現代曲にも参加してた。
「また代役ですか、すごい」と声をかけたら「もう代役専門!」って笑ってた。

6重奏だから6人のはずだけど、椅子がひとつ足りない・・・と揉めてる。
あら。バイオリンのH田さんは、空き時間をつぶさないといけないので、弾かないけどここで見学させてくれというのね。
かわいそうに、ぎっくり腰で歩くのも不自由みたい。
そしたら、隣にいたOさんが「たかがぎっくり腰で。わたしはヘルニアよ」と、おかしなマウントを取る。
こういう過激発言ばっかりするけど、もうこの人の変人ぶりは有名だからあまりみんな構ってあげない。

でもOさんホントに辛いらしく、駅から公称徒歩5分のこの会場にタクシーで来たんだ。
そんなにひどいのに、来てくれたのね。えらい。あたしは同情するよ。
この、うまいOさんがファーストバイオリンを弾いてくれなかったら、この難しい曲は成立しなかったと思う。

この曲、あまり知らないという人がチラホラいるのよね。
ベテランチェロさんも初めて知ったなんて言うから、内心驚いちゃった。
ま、かなり難しいし、6人揃えるのも大変。やる機会はとても少ないと思うよ。

H田さんは、K野さんからスコアを借りて見ながら聞いてたけど。
あまりにも合わないので、誰かが「手拍子してくれない?」と頼んで。
あ、それ、いい!指揮でもいい。
かなり助かる。あたしは手拍子なしでも弾けたけど、チェロさんたちがうまいのにお手上げらしい。
手拍子でもまだ足りない。「イチ二、イチ二って言ってくれない?」と誰かが言って。
H田さんは声がかれるほど号令を掛けてくれたが、腰が辛いらしくそのあたりで退席。

この曲をエントリーしたのは、ここの会のメンバーアレンジ係のK野さん。
募集をかけてもなかなか埋まらなかったんだよね。
「みなさんこんな曲にお付き合いいただいてありがとうございます」と言うから、あたしは猛然と立ち上がった。
いい曲なのに、なかなかやる機会がないと思うからすぐ申し込んだの。こういう1回限りの会でなきゃ、きっとやれない。

もし、これをどこか発表会でやりましょうと言われたら、あたしは怖じ気づくね。
練習したって、キチンと弾けるようになる気がしないよ。

わいわい騒ぎながら、難しかったところをもう一度挑戦してみたりして、楽しく終わった。
楽器を片づけながら誰かが「いやーロシアの風に吹かれまくった」という。
ほんと!どっこもフィレンツェなんて感じませんよね!
チェロさんが「ボクも思った!」とニコニコしてくださる。ああ、いつも寡黙な人なのに声が聞けてうれしいぞ。

ちなみに、この題名はチャイコフスキーが付けたんだけどね。
暖かいイタリアにロシア人が憧れを持つのは当然だと思う。
チャイコフスキーはフィレンツェに旅行した時にこの曲に着手して、帰ってきてから仕上げたんだよね?

この曲ね。
ほんとは、地元で活動する室内楽会でやるチャンスがあったから、応募したことがあるの。
なのに、メンバーがいざ発表されてみたら、あたしの名前がない。
すごくびっくりした。でも、なんとなく思い当たるふしがないでもない。
そこの会は皆さんプロ並みにうまい人が多くてね。
遊び半分のあたしが参加して、ひとりだけロクに弾けなかったら皆さんもつまらないでしょ。

とはいえ、けっこう傷ついてたんだよね。
そういう、因縁の曲だけど。
これで、記憶の上書きができたよ。
おかげで、死ぬときに「ああ、フィレンツェの思い出がやりたかったあ」なんて言わずに死ねるわ。

本日のオマケ

作り置き、厚揚げ入りカポナータがあるから夕飯は安心。

オリーブが、緑と黒があるので一緒に使えるレシピを探した。粗みじんに切ってアンチョビとオリーブオイルを混ぜたタレを、元レシピではレタスに掛ける。代わりにキャベツ千切りで。

さっき買って来たブロッコリー、一度も冷蔵しないで蒸し煮して冷ましただけの状態が一番おいしいね。

ワインは、グラスにこれだけしか残ってなかった。もちろん炭酸も抜けまくってるけど、それでもおいしい。もう1本開けたくなったけど、あまり冷えてないから諦めることができた。

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