夢は何

子供に「夢は何」と聞いたら。普通は職業を言うよね。
高校の時に級友が「お嫁さん」と言ったのが忘れられない。
その夢は、ずいぶん早く二十代前半に叶ったわけだ。あれから会ってないけど、今もきっと幸せだろうと思う。

子供の頃のあたしの夢は、「赤ちゃんを育てること」だったな。
保育園で、帰りのバスを待つ間にトイレに行きたくなったんだけど、行ったらバスに乗り遅れちゃう。
我慢してたら、バスに乗る前に盛大におもらししちゃったの。
と同時に、盛大に泣いた。
もちろん先生は冷静に着替えさせてくれて、よく覚えてないけどあたしひとりだけバスに乗って帰ったと思う。

家に着いたらもうすっかり忘れてて。
パンツに保育園の名前がマジックで書いてあるのを見た母が初めてそこで気づき、あたしも「あ。そうだ」と思い出すというのんきすぎる子だった。

でも、しつこく覚えてるよな。
帰る前にトイレに行きたくないか確認しなかった、バスを待ってる間にトイレに行きたくなったら先生に言えば大丈夫、って教えてくれなかった先生が悪い・・・って本気で数年は恨み続けた。
いやな子供だねー今思い返してみると。

で、ね、あたしはもし先生になったら、子どもたちにここまで教えてあげたいと思ったの。
もちろん赤ちゃんや小さい子と遊ぶのが大好きだったのも前提だけど。
あとからピアノを習うようになって、保育士や幼稚園教諭なら一日中ピアノ弾いてられると思ったのも強い動機。

家族も高校の担任も、あたしがそういう職業に就くことを反対した。
「そんなのつまんない」って。もっと大きい子供を教育する方が面白いだろうって。
そうかなあ。まだ言葉が話せない子どものほうが興味あるのにな。

高校の図書館ではルソーの「エミール」とかの幼児教育論、または音楽関係の本ばっかり借りて読んでた。
当時の図書カードは手書きで書名を書いて読歴がわかるやつだったけどね、あたしのカード見た後輩が「名前見なくてもすぐよはねす先輩のカードってわかります」って笑った。
中二病だったな。人生で一番カタブツだった時代。

そこまで入れ込んで、親もあきらめてそういう学校に進ませてくれたのに、あたしは。
「目の前にあった幸せにすがりついてしまった」って歌があったけど、そのまんまだ。
あ、歌では永久就職(=結婚)だったけど、それではなく。
就職を心配してくれた知人が紹介してくれた会社に、そのコネで入社させてもらった。
教員採用試験を受けもしないで。

当時は就職氷河期で、採用試験に通る自信は無いし、合格したとしても初任給9万円。
紹介された会社は12万円。すごい違い。
よその子どもを教育しなくても、自分で産んで育てればそれでいっかー、と自分に手のひら返しをした。

今だから言えるけど、それで正解だよな。あたし、お金がないと幸せじゃないもん。
仲良しに幼稚園教諭がいて、5歳下だけど、その当時でもやっぱり初任給9万だったって。
親からは「せっかく進学させてやったのにたった9万か」と言われてしまったそうだ。

子供を産めなかったのだけは残念。何度も「子供さえいたら絶対に幸せか、いや違う」といい聞かせた。

そんなあたしも60歳になり。
子供の他に考えられる夢は、一人暮らしして、何もかも自分で決める生活をすること。
それには、けっこうなお金が必要、というかお金を掛けた生活ができるようになるのが、夢だな。
遊びの場(あたしの場合音楽を聴く、演奏するがほとんど)がたくさんあって、ホイホイ出かけられる便利な東京に住んで。
狭いのは仕方ない。とりあえず、親も看取ったし、買える範囲でピアノが置けるマンションも買った。

ついには、場所だけでは足りず時間も欲しくなって、仕事をすっかり辞めた。
幸い、退屈しない程度の適度なストレスのある、ラクな仕事だから長続きしたけど。

もう、この上の生活はないだろうと思うよ。
そこでもし、あと20億円ぐらい転がり込んできたら叶えたい夢はなに?と聞かれたら。

そういうの、考えるの好きなんだよね。お金があれば。お金があったら。
もっと広い部屋に引っ越して、そこでは防音が完璧で、夜中でもピアノが弾き放題なの。
もちろんピアノはグランド、それにチェンバロも二段式の作ってもらって輸入するぞ。
家事?人に頼むなんてめんどくさい。今日は家政婦さんが来る日だっけ違うんだっけ、とか考えるぐらいならほったらかしにしたほうがマシ。

しかし、ね。考えたら実現してる知人、いたわ。
いつもいつも「練習したいのにできてない」しか言わない人が、ついに防音カプセルを買って、リビングに設置したとは聞いていた。
リビングが狭くなっちゃって、でもそれをダンナさまも許してくれた、ってありがたがってた。

だってその人、もし夜中の3時に目が覚めたらそのまま楽器の練習するんだって。
レッスンにも通ってるので、趣味にお金がかかるからって朝6時からのパート勤めもしてるんだよ。
なのに、昼も夜も「練習しなきゃ」って言い続けてる。
そりゃ、ダンナさまも防音カプセル買ってくれるわ。

東京に出るには少し遠いところにお住まいだけど、練習環境はあたしの夢を叶えてる。
尊敬以外、ない。あたしは夢もかなわない。人間もその人にかなわない。

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コメント

  1. にゃんた より:

    夢かぁ。夢ねぇ。
    改めて考えると夢なんて持たないで生きてきた気がする。
    目も前にあることをやってきただけのような。
    向上心がないのが敗因だったのね。
    今の夢は今が続くことかな。
    体型もあまり変わりませんように。
    食べたいものは食べていたい。
    そうすっと結構毎日走らなきゃなんだけど、まあそれはそれで。

    20億入ったら20億分投資で遊んで死んだら寄付かな。

    • よはねす より:

      ふーむ。きっと、何でもできちゃう人は目標とか夢とか設定する必要がないんでしょうね。だって、やりたいなと思ったらやればいいだけですからね。
      あたしと逆に、お金が欲しいと思ったら手に入ってくるからあたしみたいな守銭奴になれない。あたしには20億で遊ぶなんざあ考えもつきませんよ。

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