厳密にいうと、「遅刻」じゃない。
慣習的に、だいたい11時半ごろ三々五々集まって、先に着いた人からランチを食べ始めることになってる。
あたしはいつも、11時45分ぐらいに着くようにしてる。
あんまり長話好きじゃないからさ。
平日オケの練習が13時から始まる前に、カズちゃん、石田さん、ミホさんと4人でランチするの。
出かけるまでに、あと1時間ある。
その15分前に鳴るようにキッチンタイマーを仕掛けて、チェンバロの練習をしたんだよ。
タイマーが鳴ったのに全く気づかなくて、ふと気づいたらもう予定の電車が発車する時間になってたんだ。
完全に準備は整ってたのですぐに出かけたけど。
12時近く、あとひと駅というところでカズちゃんから「忘れてないよね?」ってLINEが来ちゃった。
いつも、よく気づいて細やかに配慮してくれる人を心配させちゃった。
着いたら、4人がけテーブル席に補助椅子出して、そこにカズちゃんが座ってる。
ソファ椅子はちゃんとあたしの分を空けてあって、レギュラーメンバーじゃない男性K村さんが加わってた。
あたしが顔を見せたら、K村さん以外はみんな「よかったー」と笑顔で迎えてくれたけど。
K村さんはちょうどおしゃべりの最中だったので、話を止めず続きを話してる。
ぜんぜん終わらないので、あたしは謝ることもできない。
言い訳をしたかったんだけどな。
あ、話が切れたかなという一瞬で経緯を話しかけて、目の前の石田さんは聞いてくれたんだけど。
K村さんが一切無視してまた別の話を始めるので、カズちゃんもミホさんにもとうとう言い訳ができなかったよ。
彼が「一足先に練習所に行く」と、席を離れた。
もう、石田さんに言い訳しちゃったので、同じ話を繰り返すのもなー、と思ってさ。
あたしが、練習を忘れてたとかカズちゃんに思われたらいやだなあ。
いや、キッチンタイマーが聞こえなかったのだって、100%あたしの落ち度なのは変わりないか。
K村さんは、最近愛犬を亡くされたそうなのね。
奥様がかなり悲しんで、愛犬と一緒に散歩した道を今、ひとりで散歩しに行くんだって。
「そんなのやめろ、って俺言うんだけどさあ」
ミホさんが「その悲しみをしっかり受け取るほうが、癒やしになるのよ。一緒に行ってあげれば?」とかいいことを言う。
K村さんは、もうすっかり悲しむことなんか無くなったんだと。「ぜんぜん?」とケロッとしてるよ。
いつもニコニコしてる、気の良いオジサンだけど、周囲にあまりにも構わないので時々「え。」と思うことがある。
室内楽で、部屋を交代するときに床に座り込んで、楽器をしまうのにやたら散らかして時間がかかるし。
昨年は、どうもコロナに感染したらしいのに医者にも行かず。
練習中マスクもせずゴホゴホ咳をして、ミホさんが続いてコロナに感染してしまって本番に出られなかったことがあるんだよ。
ミホさん、ダンナ様が高齢なので近づくこともできず、「そんな室内楽やめてしまえ」と怒られちゃったんだって。
当時ミホさん、K村さんのことすごく怒ってたな。きっと彼から移された、と言って。
別の話だけど、K村さんが離席したあとミホさんが話してくれた。
ミホさんは、18年も飼っていた猫を亡くしたとき、毎日泣いていたそうなのね。
ある夜、寝ていたらミーちゃん(という名だった)の鳴き声が聞こえて。
ミーちゃんが、手元にポン!と乗ってきて、その大きさも手触りもまざまざとあり。
「ああミーちゃん、帰ってきてくれたの?ありがとう」とナデナデしたら、パッと消えた。
そういう夢を見たそうだよ。
だからね、あんまり悲しんでばかりいると、猫も成仏できなかったのじゃないか、とミホさんは思って。
それからミホさんは、泣くのをやめたそうだ。
その代わり、あたしが泣きそうになっちゃった。
あたし、昔は卒業式でみんなが泣くのがさっぱり理解できなかったんだけどねえ。
話だけでもらい泣きできるほど、年を取ったってことだね。
本日のオマケ

朝ご飯が早めだったので、ランチは珍しくしっかり食べたかった。カレーは肉がごろごろ。ここの食堂、野菜にこだわりがあるのでうれしい。めずらしい色、紫と薄オレンジのは大根だよ。

こちら、夕飯。帰りが遅いとわかっていたので、前日のおかひじきサラダはたっぷり作りおき。サバも解凍しておいて、たくさん茹ですぎて残ってたキャベツも一緒に焼いた。
谷中生姜は梅酢に漬けておいた。好物だけど、ごくたまにしか買わないな。

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