演奏会前日の総練習のことをゲネプロという。
何の略かは知らない。悪しからず。
今日が本番。きのうは本番と同じホールでゲネプロやってきた。
たまにイジワル(?)なホールだと、前日には貸してくれないところもあるよ。
第九、お隣さんは5回めだという。
トップ奏者の吉田美和似は9回めだって。
みんな、数えてるんだなあ。あたしははっきりしない。でも、だいたい5回ぐらい。
何回やっても、本番前に「全然弾けてない」と焦るところが毎回何か所もある。
トップ吉田さんとあたしが違うリズムで弓を動かす。
あたし、間違えた?と、ショックで弓を止めてしまった。
お隣フランス人形は「吉田さんが間違えた。後で聞いておく」と言う。
いや、なかなかね、トップさんの間違いって指摘するの勇気いるよね。
さすがフランス人形、鋼のメンタルを持っている。
でもね、指揮者が、「もう一度ここから」と、まさにその部分を練習させたの。
で、やっぱりトップさんが間違ってる!とあたしたちは目くばせ、うなずき合う。
フランス人形が吉田さんの肩を弓で突っつくけど、吉田さん振り向かない。
自分でわかったようだ。ご自分の楽譜のその部分を指差し、トップサイドさんに「間違えちゃった」とかなんとかつぶやいてた。
指揮者、きっとあたしたちに小事故が起こったのに気づいて、もう一度やらせたんだろうな。
フランス人形が「間違えてしまったー」と悔しそうにしたら、やっぱりその箇所も練習させてくれる。
指揮者って、すごいね。
練習後、ステージ袖で楽器をしまってる時。
翌日まで、楽器を会場に置いていくか持って帰るか、という話が毎度行われる。
あたしは必ず置いて行く。持って帰ったって練習するはずもない。
「最後の悪あがきを今晩する」とか「大切な楽器を置いて帰れない」とかいろんな人がいるよ。
吉田さんは「わたしは持って帰っちゃいけないんだ」とポツリいうけど、かわいそうに。
誰もその話を拾ってあげない。
彼女、優しくて気配りも行き届くのに、みんな畏れ多くて話しかけてあげないんだ。
あたしとフランス人形がぺちゃぺちゃしゃべってるのを横からじっと見たりしてるから、たぶん一緒にお喋りしたいんだろうなあ、と思う。
で、みんなの話が尽きたところで吉田さんに話しかけてみた。
「さっき、持って帰っちゃいけないって言いました?」
以前、持って帰って家で練習したらやめられなくなって、翌朝起きられずに午前のリハーサルに遅刻しちゃったんだって!!!
えー。何でも完璧な吉田さんがそんなことを仕出かすなんて。
もっと、周りに大勢いるところで振ってあげればよかった。
ところで第九って、ご存じのように独唱ソリストが4人いる。
ゲネプロではメゾソプラノとバリトンがホンモノ、ソプラノとテノールは代役さんが来てくれた。
ソプラノもテノールも、とても小柄でとても若い。
よくあの細い体で大声が出るものだ、と感心していたが。
我らがパートリーダー、歩く週刊誌みたいな人。
芸能人の話とか、音楽家でもプライベートの噂話が大お好き。
楽屋、トイレ前の廊下でテノールさんとすれ違った。
リーダーすかさずつかまえて「お若いですねー!おいくつなんですかぁ」
にじゅう、よんさいです・・・テノールさん、たじたじ。
こらこら!こんなところでナンパしちゃイケマセンよ。逆ナン!
思わず袖を引っ張りたくなるほどだったけどね、あたしがたしなめたもんで「頑張ってくださ~い」と後ろを振り向き振り向き楽屋へ戻った。
もうひとりその場に居たフルート女子も、下向いて笑いをこらえてる。
ああ。テノールさんに「こう見えてこのヒト、お孫さんがいるんですよ」ってチクってあげればよかった。
時間切れです。オマケ付ける時間なくてごめん。これからコーヒーも飲まず、午前リハーサルに行って来ます。
コメント
ワテがホットカーペットの上で寝ている間に精力的に活動してまんな。
ほんま…尊敬です。
第九のバリトンの歌い出し、あそこが好きです
やっぱり、キラキラ生活は、努力のご褒美なんですね。
本番の結果発表、楽しみや!
いやいや。オケ活動なんて、あたしがいくらサボりたくてもスケジュールはあずかり知らぬところで決められるわけで。今回、精力奪われて帰ってきましただ。
そう、あのバリトンの歌い出し。あたしの中ではあれが第九のハイライトです。合唱のみなさんはもちろん「晴れたる青空ただよう雲よ~」でしょうがね。