楽しい時間が終わりみんなでホールを出たら、S山さんが出口じゃない方へ歩いていく。
邸宅の中を見物していいとは知らなかった。彼は知っていたんだろうか。
館長さんが彼の後をついて行く。S山さん、怒られないかな。
来た時に鍵があいてなかったので、仕方なくお庭に入って見せてもらってたんだ。
あずまやとか、錦鯉がウヨウヨいる池とか、石段や太鼓橋がたくさんある凝ったお庭を、S山さんもずんずん歩いてた。
で、やっとホールに入れてもらったら、館長から「庭に入るのだったら、一声かけて欲しかった」と釘を刺されたのよ。す、すみません。
ところがね、館長さんむしろ進んで案内してくれたの。
立派すぎる棺桶、の半分ぐらいの長さの箱はオルゴールだって。
鳴らしてみせてくれた。ロールのでこぼこの他にベルも付いてて、チンチン鳴るんだよ。
曲はオペラ「椿姫」の、なんだったかな。あたしにはよく聞き取れなかったけど、他のみんなはすぐわかったって。
この他にも別の曲のロールがたくさんあるけど、全部オペラの曲なんだってさ。
ちょっと横を見たら別室がある。
館長「ここはチェンバロを弾く人だけが入っていいんです」と、あたしの顔を見る。
ホールに案内されて入ったとき、真っ先にあたしがチェンバロの蓋をあけて突っかえ棒を立てたのを見てたんだね。
え、それじゃ。とその部屋をのぞいたら、グランドピアノがでーんと据えてあった。
でも、ほかの仲間もみんなぞろぞろついて入って来ちゃったよ。館長さん、黙認。
グランドピアノに見えたその楽器は、ピアノと同じ白黒鍵盤だけど、二段ある。
弦をよーく見るとジャック(チェンバロの部品)が付いてて、ありゃーこれチェンバロだよ。
昔、チェンバロがすたれて世界から消えた時期があったのだけど。
その後、復刻で作った楽器なんだって。
ペダルが7本もついてる。それを踏み込まないと、音が鳴らないんだって。
さ、さわってもいいですかっ。と館長さんにきいて、ポーンと一音鳴らしてみた。
さっきの、ホールのチェンバロとまた少しだけ違う音色。でも、チェンバロはチェンバロだ。
いつの間にかレコードでチェンバロ曲をかけてくれてる。
それがまた、蓄音機なのよ!テレビでしか見たことないやつ。
レコードがやたら録音状態が悪いと思ったら、ワンダ・ランドフスカの演奏だった。1959年に亡くなってるのでモノラル録音に違いない。
ランドフスカは、世界で忘れられてたチェンバロを復活させた人なんだよ。
目の前にあるこのへんてこな楽器は、彼女が使っていたのと同じモデルなんだって。
館長の大サービスに感激してみんなでお礼を申し上げ、さてタクシーを呼ぶか、ということになったら。
ひとりチェリストさんだけクルマで来てたので、彼女が駅まで送ってくれるという。助かるう。
・・・・と、はしゃぎまくったので、フルートさんが立て替えてくれたタクシー代とホール代を支払うのを最後まですっかり忘れてしまった。
電車に乗ってずっと一緒に話してたのに、誰も気づかなかった。
夜になってからフルートさんにお詫びの連絡を入れたら「みなさん遠くから来てくださったのでいただかなくていいですよ」だって。
まさか、そんなわけにはね。次回会ったときまで、ごめんなさい。
引き続き、楽器を背負ったままチェンバロレッスンに向かう。
時間調整と、小腹も空いたので、スタバでおやつ。
「ディカフェのショート」と注文したのだけど、ラテのディカフェが来たのが意外だった。ブラックのつもりだったけど、ほんとはラテのほうが好きなので問題なし。
あたしは冷蔵ケースの中とにらめっこでフードを物色するのが好きだけど。
飲み物だけのお客さんって今、8割ぐらいモバイルオーダーなのね。とても驚いてしまったよ。
「モバイルオーダーでトールサイズカフェラテをお待ちのお客様~」と呼ばれるまで、みんな店に入ると立ったままスマホばかり見てるよ。
時間調整終わり。レッスンへGO。
レッスン室で楽器を肩から下ろし、先生に「松本記念~をご存じですか」と聞いたら。
「今日行ってきました」だって。
は!?あたし、今行ってきたんですよ!わーすごい偶然。
チェンバロ、ちゃんと調律されててすぐ使えてよかったですぅ。
「それ、わたしが調律したんです笑」
笑!どうりでカンペキでしたあ。
別室にもチェンバロがあるの、先生ご存じでしたか。
「あれはピアノです・・・」
一見そう見えますが実は、と説明しかけたら、先生よくご存じだった。
ランドフスカが復刻した楽器、と。
でも、あれをチェンバロと、先生は呼ばないんだなあ。ピアノよりはチェンバロに近いと思うのだけど。
先生、近々あるところでミニコンサートをされるので、お友達と練習に行ったんだそうだ。
そのチラシを見せてもらったら、あたしが先生から勧められた曲も入ってる。
プログラムもとてもいいけど、入場無料で事前申し込みも不要。
ちょっと遠いのだけど、行きたいなあ。
コメント
デイカフェ、知らんかったヨ。
ググりました、そんなのあるのね
でも、カフェイン無かったら、私には物足りないかな
今度、試してみよう
チェンバロとピアノの違いは難しいのね
ピアノとい事は、中にハンマーが内蔵されてるのかしら?
ディカフェの方が、香りが弱いとは思います。コーヒーも紅茶も、香りが命ですものね。「ああおいしい」って体が喜ぶのはきっとディカフェじゃないと思います。
でも、飲み比べたらわかるけど、知らずにディカフェを飲んで「これはディカフェだな」とは絶対に気づきません、あたしは。うなゆきさん、相当コーヒーがお好きなんですね。
うなゆきさん、ちゃんとご存じじゃないですかー。そのとおりですよ、ハンマーがあるのがピアノ。で、ランドフスカモデルにはハンマーがなく、代わりにジャックが付いてたの。ジャックが弦に引っかかって、はじくんです。
今はそんなにモバイルオーダーなのね。
またアプリ入れなきゃなんないのかしら。
めんどくさい世の中になったものです。
デカフェはタンポポコーヒー連想して苦手です。今は違うのかな。
ほんと、IT貧者なんて言ってられなくなってきました。にゃんたさんもアプリ入れるのお嫌いですか。きのうもコンサートチケット買うのに新たなアプリが必要で、買うのやめようか悩みましたよ。
あたしは中学生のころタンポポコーヒーを飲んだ気がするんだけど、記憶違いかなあ。あれはあれでとてもおいしいと思ったけど、夢だったかも。