またしてもお誘いを受けて、カウンターテナーのリサイタルに行った。
今を時めく、かの有名な藤木大地様だ。
なぜ彼がこのシステムに載るのかわけがわからないほどの大物だよ。
(正規に入手した方々ごめんなさい。サブスク有料コースの友人のお供で、あたしは無料で入れてもらった)
その分、2階席だったから皆さん許して。
開演30分前、入場するお客が列をなした。
みんな、チケットを手にしている。
全席指定なのだから、焦る必要は全くないのに。
うちのオケの定期演奏会も、自慢じゃないがいつも大行列。
それは、全席自由だからだと思う。
少しでも希望に近い位置を確保したかったら、先に入場するしかない。
そして、本番が始まるまでにぎっしり埋まれば最高にうれしいけど、天気によってはガラガラな時もあるよ。
おっと、アマチュアオケなんかと藤木様を比べてる場合じゃ無い。
元々、歌曲は苦手な方だったけど、意識して聴き手としてのレパートリーを広げようとしている。
その甲斐あって、けっこう知っている曲もあった。特に前半は、知らない曲は3曲だけ。
実は藤木さんをナマで聴くのは初めて。
いや、ラジオで確かに聞いたという記憶もない。
カウンターテナーと言ったら思い浮かぶ歌手たち数名いるけど、テレビで聞きかじる程度では、感動を覚えたことはない。
やっぱり男性の裏声だよな、とどなたの演奏も感じてしまう。
藤木さんは、違った。とても自然にソプラノの声が出る、だけじゃなくて。
よくあんな張り上げる音量が出るものだ。しかも、一瞬だけどファルセットじゃない低い音域まで使ってた。
何よりも、表現力だよなあ。
大げさな身振り手振りは使わない、声の調子と間の取り方が説得力抜群。
そして、伴奏ピアニストの松本和将さんがまた凄かった。
立派な経歴なのにあたしは名前も知らず、失礼だった。
感情たっぷりに動く声にぴったり合わせるだけでも難しいと思うが、ピアノもまた感情がすごく伝わってくる。
和音をきっちり弾くと単調になってしまうところ、あたしがチェンバロの先生から教わったように、わざと和音を分散させる。
普通は低音から高音にずらすけど、松本さんはさらに順番じゃないずらし方をして複雑だった。
前半は高校の音楽の授業で習ったり有名な曲ばかりだけど、休憩後は日本歌曲がほとんど。
この中で知っているのは武満徹の「死んだ男の残したものは」だけだった。
これ、ちょっと困るんだ。一人で聞くと、涙こらえきれないんだもん。
友達の前では泣きたくないよー。
幸い、二階席だし。残響たっぷりのおかげで歌詞がよく聞き取れないから、泣かずに済んだ。
藤木さんが委嘱した曲は、歌い終わった時に楽譜の表紙を客席にかざして見せてくれた。
出版はしてないだろうなあ。もしかして手書きのままかしら。
2階席からじゃ何も見えなくて、残念。
とにかくすべてが熱演だった。
のど、潰れてしまわないかと心配になるぐらい。
カーテンコールで呼び出され、ピアノの松本さんとともにお辞儀を繰り返してたら、松本さんが「ハッピーバースデー」をじゃんじゃか弾き始めた!
あらまっ。藤木さん、45歳のお誕生日なのか!
ホールが委嘱した作品「シャガールと木の葉」を作曲した木下牧子さんが客席にいらしたはずなのに、いつのまにか壇上に現れてオレンジ色のバラの花束を渡す。
マイクで、かなりたくさん語ってくださった。あたしはほんとに彼ののどが心配。
藤木さん本人も「限界です」とおっしゃってる。
なのに、アンコールを2曲、サービスしてくれたよ。
最後は賛美歌。「歌える方はどうぞご一緒に」と言われて、歌える人がうらやましい。
歌詞の一部はちょっと聞き覚えはあったけど、正確な歌詞もメロディもわからない。もしかしたら、「神ともにいまして」だったかも。
とても良いコンサートだった。
友人も「良かったー」とため息。
反対側のお隣とそのお隣の女性、たぶんお知り合いではなさそうなのに「素晴らしかったですね」と言い合ってる。
本日のオマケ
あたしは空腹だとお腹が鳴るタチなので、必ず何かしらお腹に入れてから演奏会に行く。
鮭とかぶ、その葉とたまねぎエリンギで鍋。ピェンロー鍋の残った汁がもったいなくて、そこに具と白味噌を追加しただけ。鍋ものって、こんなに簡単にできるんだね。知らなかった。
このあと、ヨーグルトとキウイも食べた。ただし片付ける時間がなくなっちゃって、すべて洗わずに飛び出した。
友人夫妻はお勤め帰り、いつもコンサート後帰ってから食事なんだよ。空腹に耐えられないあたあしには、信じられない。
それに、お勤めがまた朝早いの。コンサートの日は4時間ぐらいしか寝られないんじゃないか?きのうは金曜だから、まだ良かっただろう。
それに比べたら、帰ってから食器洗いだけすれば寝られるあたしは極楽だー。
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