友を傷つけたことを覚えていない

室内楽も、演奏会が終わってきのうから新しい曲の練習が始まったよ。

個人練習は、満足できるほどやれてない。
体調も、元気いっぱいというまでは回復していない。
ふらふらと会場まで歩いてたら、後ろからメイが「こんにちは」と声をかけてきた。

彼女も、目の手術を受けたばかりで本当は安静期なのだけど、来ちゃったという。

そのあと、話が始まった。
ああ、あまり思い出したくないからかいつまんで書く。

あたしが、ある曲にトラウマがある話をメイにしたことがあるんだけど、実はそれは3回も彼女にしてたんだと。
昨年の合宿の食事中にその話になり、同席していた幹事さんから「はい、ストップ」と止められたの覚えてる？と。
そういえばそうだった。あたしはなぜ止められたのか、あの時わからなかった。
まだ話を始めたばかりのつもりだったから。

その曲をある発表会に出すことになり、何度も練習していたのだけど、その仲間から厳しく指摘されたのが、トラウマ。

ところが、最近メイと何かの曲で遊んだとき、あたしも彼女に「聞こえないんですけど」と冷たく笑うような言い方をしたんだそうだ。
たぶん、その瞬間あたしも「マズった」と感じた、ような気がする。
しかし次の瞬間からそれきり、ずっと忘れてた。

「覚えてる？」「覚えてないでしょ」と言われるエピソードがどんどん出てくる。
覚えてるのもあれば、全く覚えてないのもある。

メイは、もうあたしがメイと一緒に組みたくないのだろうと思ったそうだ。
そこまで飛躍するとあたしも話になかなかついて行けない。
「どういうこと」と確かめたけど、そういう意味だと分かって「ありえない」とつぶやくのが関の山。

「同じ話を何度もする」のは、時々複数の人から言われる。自覚はあまりないけど。
自分が傷ついたことは必要以上に覚えてる割に、一番大切な友人を傷つけたことは即座に忘れちゃう。

あたし、そういう人間なんだね。

お叱りを受けて「わかった。気をつける」と言ってるところに、別のお仲間が現れた。
彼も体調を崩して、きのう参加できるか危ぶむようなメールが来ていたの。
あたしたちの内輪もめを聞かせたくないのもあるけど、彼の体調が心配ですぐその話に切り替えたけど、メイはどう思ったかな。

あたしはその後、練習室に荷物を置いてトイレへ直行。
それほどデリケートじゃないはずの腸も反応したようだ。

落ち着いて練習室に戻ったら、メイと井川遥激似が仲良く話をしてる。
今度の合宿で、メイの希望曲に偶然あたしが参加することがわかった、という楽しい話題だ。
少し救われた気持ちになって、練習を始められたよ。

次の曲も、メイと一緒。
すごーく難しい入り組んだ曲だけど、メイすごく頑張ってる。
パート譜ではなくスコアを何ページもつなげた楽譜を見ながら演奏してる。
音もすごく大きい。
もしかしたら、あたしから「聞こえない」と言われないように頑張ってるのかなあ。

帰りの電車も、ひと駅だけ一緒。
難しい曲の話と、メイの目の治療の話だけで平和に済んだ。

メイはここで乗り換えるけど、あたしはこのまま乗り続けること、たぶんメイは忘れていたんだろう。
「じゃ、お大事に」と手を振ったら目を丸くしていたよ。

唐突な別れ方になってしまった。
帰って来てから、いろんな疲れが出て、しばらく何もできなかった。

まあそんな気がしていたので、夕飯は考えてある。
以前、スーパーの新商品の冷凍食品ラザニアを買ったのを解凍しておいたんだ。

しかし買ったあとでよく見たら、電子レンジ専用商品だった。
パッケージのままレンジにかければ食べられる。ちなみにうちにレンジは無い。

ま、パッケージから耐熱容器に移してグリルで焼けば食べられるだろう。

帰宅後1時間も経ってから、ようやく焼き始めたよ。

パッケージと耐熱容器の大きさが合わなかったところはむしって、無理やり。