笑ったカラスがもう泣いた

交流、交際

きのう「平和ボケした」と書いたと思ったら、もう事件です。

きのうも室内楽に行って、1曲めはまだ大丈夫だったのよ。

ホームからエスカレータを降りる途中で、向かいの階段からメイが降りてくるのが見えたけど。
こちらに気づいているのかわからないけど、表情が硬い。
あえて追いかけるのはやめて、普通に歩いて練習室に入った。

練習室には、先月無断欠席したトマトさん一人。「先月は失礼しましたー」と、珍しく常識人のご挨拶。
井川さんとアニーさんも揃ったけど、メイは開始時間5分前にやって来た。

トマトさんが「YouTubeで聴いていたグレン・グールドの演奏がもっと速かったので、今やったテンポだと間違ってしまう」という。
それが、ほかの4人は聞いたこともないほど速くてね。
じゃあ、崩壊前提というつもりで、そのテンポでやってみましょう、とやってみたら。

メイのピアノが全く崩れずその超豪速で最後まで駆け抜けたの。
我々弦も、なんとか離脱者は出なかったけど。
すごいメイ、グレン・グールド並みだったね。

1週間後の合宿の話などみんなとして、和やかに終わった。

2曲めはブラームスのクラリネット五重奏。
この曲もメイと一緒。
とても複雑な曲、難しいんだ。
メイがあたしに「ため息つかれた」とか言ってほほ笑む。
あたしがため息吐いたかね?もしかしたら、難しくて息を止めてたか、自分が間違ってがっかりしたのかもね。

練習時間残り少なくなったころ、「ここからやり直しましょう」と皆で楽器を構え直したんだけど。
メイが構えても、すぐ下ろしちゃう。あとの4人だけで弾き続けた。
なんだメイ、難しくて戦意喪失か?
最後まで弾き終えて、そっと隣のメイを見たらなんだか涙ぐんでるような。
様子がおかしいけど、誰も声を掛けられない。

気になりつつも、最後に部屋の明かりを消して、会場の外に出たら、メイがあたしを待っていた。

「もうよはねす、怖いんですけど。ため息ついたりして、もう一緒にできない。
幹事さんたちにわけ話して『こんなひどいことされたんです』って言って、メンバー変えてもらう」

え、ため息って、(やっぱり)あたし!?
もしため息が出たとしても、それはメイに向けたものじゃないけど、メイは完全に非難されたと思い込んでる。

彼女とは長い付き合い、たまにこうなっちゃうのは経験済み。
今度こそほんとにため息ついた。
「わかった。あたし、メイの思ってることに気づく能力持ってない。しょうがないの。一緒にいたら、何度でも同じこと繰り返すの、治らないと思う。
でもあたしは、メイのこといつも尊敬してるし、バカにしたことなんてない」
そばを岸部さんが通り抜けて、不審顔をしながらもメイに「お疲れ様でした」と声を掛ける。メイもなんとか普通の声で返事をする。

急に、下腹に圧迫を感じた。
「おなか痛くなっちゃったから、トイレに寄ってから駅に行くね」とメイに告げ。
今まで仲良くしてくれて、ありがとう。と背を向け。
思い出して、振り返る。「あ。お母さま、お大事に」

お腹は、下したわけじゃない。ちょうどいい具合。こういうとき、便秘症って都合がいいな。
あたし、最後にちょっとカッコイイこと言えたかも。と、自分を慰める。

まだ駅にメイいるかしら。
エレベータでホームに上がったら、30メートルぐらい先のベンチにメイが腰かけてるのが真っすぐ前に見えた。
うう、気まずい。でもお互い、悪い事したわけじゃないから。
遠くから会釈を交わして、5メートルほどのところまで近づいて立ってたら、前日から言いたかったこと思い出した。

すぐそばまで近づいて「合宿のことだけど」
メイも何か言おうとしたようだけど続けた。
「荷物、あたしの部屋に置いていくといいよ」

(メイはお母さまの具合が悪いので泊まれず、新幹線で夜帰り、翌朝また新幹線に乗って参加することにしたのだよ)
メイは「悪いからいいよ」と遠慮してる。でも、やっと笑顔が出た。
え、全然悪くないよ!大変じゃん。

そこから、お母様の話をしてくれた。
お母様は先月まで元気だったのに、急に体力が落ちて紙おむつになってしまったそうだ。
メイは相談する人もなくて、紙おむつがどこで買えるかすら知らず、困り果てていた。
「え、地域包括センターには相談してないの?」

救急車も2回も呼んだので、その時の看護師さんから教えてもらったとか。
介護保険使えるんじゃない?え、有料?たったの五千円なら使わなきゃ。メイ、お仕事もできないじゃない。

その五千円が妥当なのかどうかもメイはわからず、だいぶ混乱していたようだ。
電車に乗り込んでからも話を続けたけど、ハッと気づいたらもうメイが降りる駅。
メイはあたしの肩に手を置いて「さっきはごめんね」と言ってくれた。
う、うん。深刻な話を聞いた直後だからあたしは笑顔は出せなかった。

その駅で座れて、ぼけーーとしていたらメイから連絡が入った。
スマートウォッチで全文読めた。
「あんなひどいこと言ったのに声かけてくれたよはねすの人間の大きさ云々」
最後に「これからもよろしくお願い」とのこと。

ふう。そうですか。じゃあ、また今までどおりにお付き合いしてくれるのね。
今回は、ほんの小一時間のうちに解決してよかったわ。
合宿までに、新たな悶着が起きないといいなっ。

本日のオマケ

数日前の写真の使いまわしのようだけど、違う。昨日の夕飯。

木曜に作ったさつまいものニョッキの半分をとっといたの。普通の人なら冷凍するのかね、あたしは冷蔵のままで平気。

日曜室内楽の後は、まともに料理作ってる時間も体力もないので。プチトマトもない、作り置きキャロットラぺもまだ作ってない、なにか赤いものないかと思ったら梅酢に漬けて忘れてた生姜があった。

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コメント

  1. うなゆき より:

    家族が要介護になると大変でござる
    そうなると、違う人間関係も暗く考えて上手くいかなくなりマイナスのループに落ち入りやすくなるって、いつか聞いたことが有るヨン
    なんか、ソレを思い出したヨン

    でも、まあ、いつか時が来れば又ネ…
    人間関係を長く保つって、難しいでござるネ

    • よはねす よはねす より:

      あら、そういうことがあるのね。うちの母の介護の時は仲良し妹と支え合えたから、大丈夫だったんだな。メイは妹さんとそういう仲でないらしいから、苦労の上塗りだろうな。
      長く保ちたい友人って、今までもしかしてメイ一人だったかもしれない。ほんと、難しいでござるよ。

  2. にゃんた より:

    よはねすさん、えらい。
    ぼくなら、そう言われたからではなくてそう思わせたのが申し訳なくて自分から引くと思う。
    メイさんが大事な友達ってことがとてもよく伝わります。
    これからも仲良くね。いろんなことがあるんだろうけど(^^)

    • よはねす よはねす より:

      ううむ、なんともにゃんたさんらしいです。自分からお別れを切り出しちゃう?若いころ、友人が彼氏から振られるのが怖くていつも自分から振ってたの思い出します。

      いろいろ乗り越えるたび、いつも最後に許してくれるのはメイの方です。まあ、これからも大波小波があるんだろうとあたしも思います。
      ありがとう、できるだけ仲良くしていたいです。