社交的になったわけは

机の引き出しからヘアゴムが出て来た。
銀座のヤマハで衝動買いしてね。
家で包みから出したとたん手からポロッと落ちて、いきなり折れちゃったんだよ。

ネックのところが繊細に穴があいててテグスを通してあるからね、ここが弱い。

1回も使ってないのに壊したのはショックだけど諦められなくて、セメダインで接着したら見た目は問題なくなった。

で、使おうとしたとたん、また手から落ちて。

あ。落ちて、って、ゴムのせいにしたでしょ。
違いますねー。「落として」また同じところを折ってしまったんです、はい。

しばらくショックから立ち直れなかったけど、1カ月ぐらい経ってからやっと気を取り直してセメダイン使って。
なんとなく、がちゃがちゃしてるヘアアクセサリー置き場に置けなくて、机の引き出しにそーっと置いといたら忘れてた。

きのうまたオケ練習があったんだけど、行く仕度してたら偶然見つけて。
音楽仲間に見せびらかしたくて買ったんだったよなー。
こういうとき、使わなきゃ。と、着けて行った。

開始15分前に会場に入ったら、ほぼ全員揃ってて。
空いてる席は背中キツキツの一番後ろ、誰も後ろを通れない。
せっかくの髪飾りは、誰の目にも留まらなかった。

しかし、そんなことを吹き飛ばすように。
そのお隣に、見たことない女性が座ってる。だれ！？

顔を見ながら、「よろしくお願いしますぅ！」とあいさつした。
え、今日は見学にいらしたんですか？
「いえ、この前見学に来まして、今日は入団します」
うわあ！ありがとうございますう！！

本当にうれしい。
うちのパート、昨年二人も死んじゃったり、奇病で弾けなくなったり家族の介護だったりで人数減って困ってるんだ。
このさい、腕前なんか重視しないよ。音が出せればいい。

と思ったけど、杞憂。
きのうはけっこう難しい曲「シベリウス交響曲第二番」だけを3時間やる、っていう練習だったのね。
メロディは素敵だけど、それ以外の部分がすんごく複雑で。

お隣さん、初めて参加したというのに、ちゃんと間違えずに弾いてるよ。

休憩時間に「オケの経験、相当おありなんですね」と話しかけた。
「経験は、年数だけは長いんですけど」なんてはにかんでる。
あたしより10歳近く年上かなあ。でも笑顔がかわいい。
謙虚な人、大好きだ。自分が反対だから？

指揮者が「128小節からもう一度」なんて指定するときだけ、困ってた。
あ、もしかして小節数の字が見えない！？
仲間の高齢化が激しく、みーんな楽譜が「見えない見えない」と普段から大騒ぎしてるから。

その箇所を指さして「字、ちっちゃいですよネ」と言って教えてあげた。
笑って「ちっちゃくて～」と、またあの笑顔を見せてくれた。

難しくて、個人練習しなきゃ！ってところはあたし☆印を目印に付けてるのね。
そしたらね、たぶん偶然か、彼女も☆印を付けてた。
ああ、その話もすればよかったなあ。

子供のころは、人に話しかけるってことが全くできなかった。
就職してからもしばらくはそうだったけど、年数が経つにつれ話したことがない人も少なくなってきて。
亀の甲より年の劫　え？なぜこんな変換をするんだｍｙPC。年の功で、誰とでもだいたい冗談も言えるようになった。

いや、きのう読んだ本「老害の壁」ではね。

「女性は閉経後に男性ホルモンが増えることがわかっていて、その影響で社交的になっていく人もいます」

むぅ～。すごく、心当たりある！
その頃、新たな音楽活動を始めたときはずいぶん緊張してたけど、どんどん溶け込めるようになったんだよなあ。
レストランのソムリエさんにだって、冗談こそ言わないけどさほど緊張しないで注文できるようになったし。
女性のみなさん、長生きしましょうねえ。人生は、これからがきっと楽しい。